Renaissance Man

とにかく、あれこれやってみる。

秋の夜長のポケモン小咄(こばなし)


あこがれのポケモンマスターたちに囲まれて

あこがれのポケモンマスターたちに囲まれて

(落語風に)え〜、秋の夜長にひとつ、ポケモンの小咄などいかがでしょうか。まぁ、20台後半から30台前半の方にしかわからないかもしれませんが、その年代に該当される方はぜひお聴きください。

 

 

筆者は、ポケモンに超はまったわけであるが、ポケモンと聞くと思い出すのは、母が、自分には弟が一人いるのであるが、母が当時自分の回りの友人が全員持っていたポケモンを、ついに!ついに!買ってきてくれた時の話である。母は、ポケモンを二つ買ってきてくれた。弟と俺に喧嘩しないで楽しめと言う。そう言うと、おもむろにポケモンを出したのであるが、ふたつとも同じレッドであった。これだと兄弟でポケモン150匹集められないじゃんwと心ながらに俺たちは思っていたが、母がキレるのが怖くてふたりで黙っていたのが懐かしい。俺たちがジャンプをコンビニで買って勇んで家に帰ってきてさぁ、読むぞ!っと意気込んでいると、母がお昼のカレーパンと肉まんを差し入れしてくれたのだが、それだけでなく、なにやらにんまりとしている。背中の方に手を回しているのを見ると、どうやら俺たちの喜ぶものを隠しているらしい、と思ったのも束の間、母は、今俺たちが買っていたばかりのジャンプを取り出して、のドヤ顔!、俺と弟は、今買ってきたばかりのジャンプをそっと、隠し、喜ぶふりをしたのも懐かしい。

 

また、さとし、というポケモンマスターとリアルに同じ名前の友人がいた。そのお兄ちゃんがめちゃゲーマーでさらには、ミュウを持っているという噂が校内をかけめぐった。さとしには連日連夜、友人、知人、お前誰?っていう奴からありとあらゆる奴がミューをコピーしてくれと、言いよられていた。俺も超、連日連夕方頼みまくって、拝み倒して、ついにミュウをコピーしてくれることが決まった。おれはもうめちゃくちゃうれしくて、天にも登る気持ちだった!当時、大技林という裏技全集に、ポケモンのコピーの裏技が載っていたから、それをやる算段になっていたのだ。当然、家で、弟と何度もコピーの練習をして翌日に備えた。

俺は翌日の放課後、さっそく公園でミューをもらおうと通信ケーブルを握ってさとしを待っていた。さとしは、めっちゃダッシュで俺に駆け寄ってきた。俺が「お前は、ダッシュ四駆郎か!」と突っ込む間もなく俺に急ぐように告げた。

「はやく!はやく!にいちゃんが帰ってくる!!!!バレたら殺されるからはやくはやく!!!!」

「おう!まかしておけ!」

俺はさとしのゲームボーイに通信ケーブルを差し込み、互いに爆速でポケモンを交換する手順を踏み合った。通信を司るポケモンセンターのお姉さんがいつもより遅く感じられる。相手との通信確認待機時間が永遠に感じられる。

♪テレレってんてんててんってんってんってんててん…♪

よっし!通信が開始した。

ぽんぽん!モンスターボールがこちらにきた!俺はきのう弟と練習したように、モンスターボールが行き来した一定のタイミングを見極めて、こっちの電源を切り、サトシの電源も切るように指示した。よっしゃーーーー!!!っと心の中でガッツポーズをしながら通信ケーブルを抜いた。

「これで!念願のミューが!!!しかもさとしのゲーマーのお兄ちゃんのおかげで、既にレベル100で、技マシン使いまくられて、技使える回数もマックスで、ドーピングもされまくっている、最強のミュー、ゲットだぜ!!!!」(心の中の声)

電源を入れて、画面を復活させる。さとしは急いでいる。「ねぇ、もういっていい?いいでしょ?兄ちゃん帰ってくる!!!やばい、やばい。バレたら殺されちゃうよ。あわあわ。汗」

「まて、まって。今確認するから。」

♪…てててーっててててーっててーててててーん!…♪(オープニングBGM)

スタート!スタート!とはやく、ボタンを連打するが、まだコマンドを認識する段階に来ていないので、どんなに押しても意味はないのだが、ミューが見たい!ミューが見たい!一心で、連打してしまう。さとしが焦らせるから、さとしに急いでるアピールもあって連打する。図鑑が151匹になっている、おぉ、自分のコンプリート図鑑!はやく見たい!

きた!っと早速スタートボタンを押し、メニューを開く。

「ウェルカム!マイ・ミュー!」

だが、ポケモンのパーティーリストを見てみると、ミューが見当たらない。あれ、、、、通信失敗しちゃったかな…俺はさとしに、

「やべ、まだミュー来てないわ。急いでるとこ悪いけど、もう一回通信して。」と再度頼み込んだ。
「いや、もう、無理、無理、またこんど、帰る。帰る!」と、帰ろうとするので、
「いや、まて、通信するまで返さない。」と帰りたがるさとしの服がきれんばかりに俺は掴んで離さなかった。

「わかった!わかったよ、わったよ。わかったから離して!だったら、はやく通信してよ。」
「そうこなくっちゃ!」
と俺は、またさとしのゲームボーイに通信ケーブルを繋ぐ。さとしは電源を入れた。
「急いでよ、まじで殺されるから。」
「よし、こっちは準備OK。」

 

あとはさとし待ちだ。

「………」

あれ、さとしの様子が…おかしい…進化するのか?と思った。そんならもちろん、Bキャンセルだ!

「…おい、さとし、準備できた?まだ?」

「………」

さとしの顔が青白くなってくる。まさに顔面蒼白。これ以上蒼くなった顔は体育の時間に貧血になって倒れた友人以外、一度も見たことがない。

「お、おい、さとし…ま(だ)…」

「いない…」






「なにが?」


「ミューがいない!」

「え!!!マジで!?」

俺はとっさに、さとしの画面を覗き込んだ。だが、覗き込んだパーティーリストには、ミューの名前がある。
「な、なんだ、…あるじゃん」

…と思ったのも束の間、そのポケモンのアイコンが…

違っていた。

エスパーポケモンのアイコンではなく、そのアイコンは水生ポケモンアイコン、しかもカニ。。。。。

 

「あ……」

 

そう、サトシのミューは、俺がミューと名付けたクラブLV15にコピーされていたのだ。

「あ、…あ、…ごめ。。。。」

顔面蒼白のままたたずむさとしを前に、俺はかける言葉もなく、少しづつ後ずさりし、チャリにのって家に帰った。

翌日さとしは学校を休んだ、今となってはわかかりし懐かしい思い出だ。思い出はみな過ぎ去れば美しい。

 

さとしくん、ごめんなさいでした。 icon-eye

 

一ノ瀬健太


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