Renaissance Man

とにかく、あれこれやってみる。

人間はなぜ糞尿の詩を学ぶか


人はなぜ学ぶのか、深く考えさせられる回。

亡くなった寅さんの友人(極道関係者)の墓参りが縁で、北海道から上京してきた娘(伊藤蘭)。家庭環境も酷かったようで満足に学校にも通えず、中卒。

上京をきっかけに定時制の夜間学校に通うため一生懸命、試験勉強をし、見事合格します。合格書類を橋を持って走るシーンにジーンとしたものを感じました。

国語の授業でしょうか、授業では旧国鉄職員浜口国雄氏の便所掃除の詩が読まれます。

===
便 所 掃 除

濱 口 國 雄

扉をあけます
頭のしんまでくさくなります
まともに見ることが出来ません
神経までしびれる悲しいよごしかたです
澄んだ夜明けの空気もくさくします
掃除がいっぺんにいやになります
むかつくようなババ糞がかけてあります

どうして落着いてしてくれないのでしょう
けつの穴でも曲がっているのでしょう
それともよっぽどあわてたのでしょう
おこったところで美しくなりません
美しくするのが僕らの務めです
美しい世の中も こんな処から出発するのでしょう

くちびるを噛みしめ 戸のさんに足をかけます
静かに水を流します
ババ糞におそるおそる箒をあてます
ポトン ポトン 便壺に落ちます
ガス弾が 鼻の頭で破裂したほど 苦しい空気が発散します
落とすたびに糞がはね上がって弱ります

かわいた糞はなかなかとれません
たわしに砂をつけます
手を突き入れて磨きます
汚水が顔にかかります
くちびるにもつきます
そんな事にかまっていられません
ゴリゴリ美しくするのが目的です
その手でエロ文 ぬりつけた糞も落とします
大きな性器も落とします

朝風が壺から顔をなぜ上げます
心も糞になれて来ます
水を流します
心に しみた臭みを流すほど 流します
雑巾でふきます
キンカクシのうらまで丁寧にふきます
社会悪をふきとる思いで力いっぱいふきます

もう一度水をかけます
雑巾で仕上げをいたします
クレゾール液をまきます
白い乳液から新鮮な一瞬が流れます
静かな うれしい気持ちですわってみます
朝の光が便器に反射します
クレゾール液が 糞壺の中から七色の光で照らします

便所を美しくする娘は
美しい子供をうむ といった母を思い出します
僕は男です
美しい妻に会えるかも知れません

===

非常に深い詩です。

学問を何のために行うのか、なぜ人は学ぶのか。その答えは未だ謎です。

専門性の高い領域に比べれば、定時制の授業など”簡単過ぎる”のかもしれません。英語も三単元でつまずく生徒ばかりです。しかしながら、その詩を、和気藹々と聞き、意見を言い合う定時制の生徒たちに学問の真髄のようなものを感じました。言葉には曰く言い難いものなのですが、この学びの瞬間にこそ、人間の美しい姿があるのだと思います。

寅さんも伊藤蘭が学校に来る際には、気になって付き添って来たり、授業にも特別に出席させてもらったりしていました。

こうして勉強を行う生徒たちの姿以上にジーンと来るシーンがラストに待ち構えておりました。そうです。伊藤蘭に付き添っていた寅さんが実は、自分も勉強しようと夜間学校に入学願書を提出していたのでした。願書の写真と、寅さんの拙い文字がまた切なさを感じさせます。しかもさらに、寅さん、中卒ならぬ小卒(中学校の時に土人の格好をして校長先生を棍棒で殴ったために退学しています。※その理由は、寅さんが校長先生から芸者の息子とディスられたためからの行為でした)なので、定時制の学校の受験資格すらないということが切なさをさらにブーストさせます。

また、社会学的に興味深かったのは、いつものラストシーン。旅先で冒頭であった北海道の水産加工場のおばさんたちの旅行に急遽、寅さんも手を引かれて一緒になるシーンです。

「今夜は男がいっから楽しいよ、おらストリップやるだよ」

この日本本来の性意識の素晴らしさよ。農村に残る豊穣の文化よ。もちろん、セクハラは御法度ですが、こうした素晴らしいおおらかな性の開放性がセクハラファッショとともに一緒に消えてしまうのは大変寂しいことと思います。

この女性の性のあけっぴろげな開放の灯火を消さないように、我々おっさんもセクハラと艶話の解像度を高めていかなえればならないでしょう。女性の性の開放は我々おっさんのセクハラセンサーにかかっているとも過言ではないのかもしれません。

人間の生きる道、勉学、金、恋愛、性。様々な人間の命題的トピックがふんだんに詰め込まれた映画「男はつらいよ」。家でこもってみるには最高の映画です!ぜひご覧ください。

詠める、
===

気高きや
恥を忍んで
学ぶ寅

#億葉集 #男はつらいよ #性の開放

 

Culture You!あ~、世界ってほんと美(たの)しい







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