Renaissance Man

とにかく、あれこれやってみる。

『未来の涅槃図』作品解説


 

天空の芸術祭がはじまりました!

https://www.tenkuartfes2017.com

天空の芸術祭とは長野県東御市で開催されているアートフェスティバルです。開催期間は10月31日までですので、ぜひお越しください!自分は北御牧庁舎の2階和室にて作品を展示しております。


さて、本作品の解説をいたします。ご興味のある方はぜひご覧ください。本日からツアーも開催されました!めっちゃ面白い作品がたくさんありますので、ぜひいらしてください!会場内は車がないとかなりきついので、お車がある方はお車でいらしてください。駐車場はめっちゃ広いので、運転の下手な私でも楽しく見ることができました(^-^)/

それでは、以下、作品解説です!

 

「未来の涅槃図」イコノロジー的作品解説

■全体解説

かつて朝廷に馬をおさめ、近代においては養蚕業が盛んであった東御地域は各地方自治体と同様、少子高齢化の課題を抱えながら地方創生を掲げる。本芸術祭に都市への人口流出を止める手立てはあるのだろうか。東御の未来のシナリオは限界集落を経た自治体消滅か、それともコンパクトシティによる生き延びなのだろうか。ある限界集落の人々に話によれば、意外にも住人たちは気楽であった。滅びゆく自らを自虐的に、客観的に見つめるしたたかさの美学がそこにある。この東御というまちの未来を想像し、自らのまちの未来、そして自分自身の未来の受け止め方を想像する余波を鑑賞者の心に投げかけたい。

■建物の桟を野馬除に「見立て」る

東御の御牧台地は断崖による自然の柵を除けば、周囲を約38㎞に渡って馬が逃げないよう土手が築かれていました。その痕跡は市の指定文化財に指定されています。本作では和室の桟を柵に見立て、柵の向こう側に馬がいるかのような情景を表現しています。東御地域は馬の文化と密接な歴史があります。御牧原台地はかつて平安時代、「望月の牧」と称され朝廷に馬を納めていました。精選された駿馬たちは今回の芸術祭の展示場所でもある両羽神社でお祓いと旅の祈願を受け、京都に送られていました。馬との蜜月は近現代まで続いていました。馬の名産地であった御牧は満州に馬を供給していたのです。馬たちは戦地で兵士の弾丸の盾になるなど”立派”に闘いました。その供養のための像が芸術むら公園にありますので、お時間のある方はそちらもご覧ください。また柵はそれだけの象徴ではありません。リサーチの結果、東御にはオウムと闘った歴史のあることがわかりました。よかれあしかれ、住民が一致団結して、自分たちのための”未来”を生み出すことに力強いエネルギーを感じました。この柵は共通のルールづくりと住民の合意と自由意志で作られた未来の柵なのです。湯の丸インター成立の過程など、地元の方たちが自分たちのあり方、ならびに自治を意識して行動した歴史が東御にはあります。行政という自治の結果に基づき運営がなされる役場で展示されていることは、その象徴でもあります。

両羽神社

両羽神社

■畳の痕跡

馬の輪郭線をよく観察してみてください。段々とした模様に気づくと思います。それはこの和室の畳の模様なのです。この場にビニールシートを敷いて制作したたため、力を込めて描いた際には畳の跡が残ります。ちょうど硬貨の表面に紙を当て鉛筆でこすると下の柄が出てくるのと同じですね。和室という日常のあるがままの空気感が畳の模様を通じて伝われば幸いです。美術の用語でサイトスペシフィックという概念があります。それはその場でなければ表現できないことという意味で用いられます。本作もこの場で制作することで滲み出てくる畳の痕跡を感じていただければと思います。

 

■日常の空気

和室利用のご案内やカレンダーなど滞在制作以前の和室の状態をとどめています。今回の天空の芸術祭のテーマは「生活は芸術だ」です。馬との空気を自然なものとして生きる東御の日常性を浮き上がらせる狙いがあります。

■未来の涅槃図

涅槃はネガティブに感じられるかもしれません。しかし、自分の未来を考え、どのように死にゆくかと考えた時、自らの生き方が逆照射されます。終わりまで、どのように生きたいか、ビジョンが芽生えるはずです。白黒のモチーフは暗いイメージを持つかもしれませんが、そこに色を加えるのはあなたです。この和室にいる馬は過去に滅んだ馬の表れではなく、”今”や”これから”の東御の未来なのです。

 

■馬の構図

描かれた馬の構図は長谷川等伯という戦国時代の画家が描いた『牧場図屏風』を参考にしています。戦国時代の画家を用いたのは、武田信玄に仕えた真田氏が崇めた白鳥神社に参拝したことが無意識に働いていたのかもしれません。

■高山植物や名産品

馬の周りにあるのは、東御地域の高山植物です。主に5月から9月にかけての植物たちを描きました。他にもスイートコーンやぶどうなど自分が食べてみて美味しかった地元の名産品を描きました。アケボノゾウやオオルリシジミもどこかにいるかもしれません。

御牧乃湯で食べたトマトとお持ち帰りしたスイートコーンとプラムとぶどうがマジで超絶うまかった!!!そして安くてめっちゃ入っていて、作っている人の顔が見えるというのがマジで最高でした!!!温泉上がりの美味しい食はマジで生きてる感じがしました!!!

他にも東御地域には温泉がたくさんあるので、ひと風呂浴びて帰るのもいいですね。心身ともにリフレッシュする贅沢な旅をご堪能ください。

 

この馬の絵がある会場で10/22日(日)に東御の未来を面白おかしく、真剣に愉快に語り合うシンポジウムが開催されます。

 

 

乞うご期待!!!

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○野馬除跡(のまよけあと)

その昔、御牧原台地はかつて平安時代、「望月の牧」と称され、朝廷の馬寮に属する勅旨牧として栄えました。

東北は千曲川、西は鹿曲川、南は瓜生坂・入布施・矢島原、東は諏訪山まで、その面積は約1千町歩。ここは断崖によって自然の柵をなしている部分を除き、周囲を約38kmに渡って土手を築き、馬が逃げ出すのを防いだものです。

この土提を野馬除といい、現在のところ市内10箇所で確認され市の指定文化財となっています。

http://www.city.tomi.nagano.jp/category/bunkazai/130448.html

○『牧場図屏風』長谷川等伯(東京国立博物館蔵)

http://www.emuseum.jp/detail/100265/000/000?mode=simple&d_lang=ja&s_lang=ja&word=%E7%89%A7%E9%A6%AC&class=&title=&c_e=&region=&era=&century=&cptype=&owner=&pos=1&num=1

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